百華の会で学ぼう!茶道における世界に誇れる日本のおもてなし文化とは?

「おもてなし」という言葉は、東京オリンピック招致の際に使われて以来世界中で日本の文化として認知されるようになりました。英語では「接待」を表す “Hospitality”と訳されますが、日本文化圏で用いられるおもてなしの意味には単に接待そのものを表すばかりでなく、相手の気持ちを配慮する心遣い・行動の一連を表します。 そのような奥深い日本のおもてなしの歴史は古く、その源流は「茶道」にあると言われています。今回は、そんな茶道におけるおもてなしについて解説していきます。

1. 千利休が説いた茶道に関するおもてなしの心

千利休が説いた茶道に関するおもてなしの心

茶道に関する歴史上の人物に千利休をイメージする方は多いのではないでしょうか。茶道千家流の始祖として有名な千利休は、日本のおもてなしの伝統に大きな影響を与えたといわれています。千利休は、彼の弟子たちに向けて以下のような茶道の心得七則を教えていたと言われています。

一則 茶は服のよきように点て(茶は相手の状況や気持ちを考えることに重きを置くこと)
二則 炭は湯の沸くように置き(準備を怠らず、丁寧に行うこと)
三則 夏は涼しく冬暖かに(相手が心地の良い気分となれる心遣いを行うこと)
四則 花は野にあるように活け(物質や空間の表現は本質を的確に捉えること)
五則 刻限は早めに(時間にゆとりを持って行動すること)
六則 降らずとも雨の用意(1歩先を読み心配りをすること)
七則 相客に心せよ(全てのことに対してお互いに相手を第一に考えること)

これらの千利休の茶道の心得からは、「常に相手の心を読み、空間から精神まで配慮を怠らない」という日本のおもてなしの原点が提示されていることがわかります。さらに千利休が指導していた時代には、異なる身分の武士や大名が同じ空間でお茶を楽しんでいたため、茶室での身分は平等とするという貴賎平等の考えも説いていました。

1-1. 「一期一会」も千利休の言葉

このように、千利休が提示した茶道における原則や教えには、他者の心を読み・備えを怠らないという現代にも通じたおもてなしの心が読み解けます。また、千利休は「一期一会」という誰もが一度は聞いたことのある有名な言葉も残しています。この言葉からは、今日出会ったものは一生に一度であるかもしれないからこそ真心を最大限に込めてもてなす、という千利休が大切にしていたお茶の心が感じられるでしょう。

2. おもてなしの「空間」作り

茶道のおもてなしの中心となる要素のうちの一つに「空間作り」が挙げられます。茶室には床の間・掛物・畳・点前座・囲炉裏・茶道口・窓といった大切な構造物があり、それぞれがお客様にとって非日常的空間を味わっていただくために欠かせません。 また、物質的な空間ばかりに重きを置くのではなく、お茶を点てる人や音・香りも含めておもてなしの空間が初めて完成します。茶室においてその日の亭主・お客様の顔ぶれや空気感によって作られた瞬間は、二度と再現することができない記憶となるのです。 「非日常」のひとときをつくることを目的とする茶道において、その土台作りとなる空間から整えるということは、日本の茶道が誇るおもてなしの一つとなっています。

3. おもてなしの「連鎖」

茶道の一番の目的は、お客様をおもてなしする亭主が日常とは異なる特別な雰囲気を創造することに加え、その時間をお客様に存分に楽しんでもらうことでした。しかし、茶道におけるおもてなしにおいてもう一つ重要なポイントは、お客様側にも亭主を思うおもてなしの心が存在するということです。 非日常的な趣のある空間でお茶を提供してくれる方の心配りに関してお客様側がその意図を汲み取り、最大限の敬意を払う「おもてなしの連鎖」が茶道ではとても重要となっています。

3-1. お茶碗を2回半回すのもおもてなしのひとつ?

お客様が亭主に対して心配りをする行動のうちのひとつにあげられるものが「お茶碗を2回半まわしていただく」という行為です。この作法自体は知っている方は多くても、その理由までご存知の方は少ないのではないでしょうか。 お茶碗を回す作法には、お茶を点ててくれた方に対する謙遜の意味が込められているのです。 亭主がお客様にお茶を提供する際、お客様がお茶碗の絵柄を最も美しく見える位置(正面)へ向けて配置します。その心配りに応えるような形で、お茶碗を回すことで「心配りをお返しする」という意思表示が込められているのです。 このような主客のおもてなしの連鎖によって、言葉をかわすことはなくても作法を通じたコミュニケーションを通して、亭主もお客様もお互いに思いやりの心を共有することができるのです。

4. まとめ

まとめ

茶道におけるおもてなしの心には、単なる接待という言葉の枠にとどまらず、「非日常」を生み出す空間作りや相互を思いやる精神など幅広い意味が込められていることがわかります。千利休の時代から現代まで受け継がれてきたおもてなしの文化は間違いなく世界に誇るべき日本の伝統文化と言えるでしょう。 「百華の会」は、東京の銀座を拠点とし、美しい茶道の文化を世界に発信する茶道教室です。初心者から上級者まで対応した幅広いコースをご用意しております。また、講師陣は海外経験が豊富で外国人の方にも日本の伝統文化の魅力をお稽古を通じてお伝えできます。茶道を通じて、ぜひ美しい日本のおもてなしに触れてみてください。